これは私がブルマーにめざめていくお話です
男子トイレの個室へ入り、カギをかけ、私はN澤さん
の体操服袋を開けた。
意外にも袋の入り口すぐに紺色のブルマーが入ってい
る。体操服の方が上だと勝手に思い込んでいたのだ。
「これがあのブルマー‥‥‥」
ブルマーを取り出す。
だが、ここで私の冷静な部分が、あることを指摘す
る。
「たたみ方をキチンとおぼえておかなければならな
い‥‥‥」
次回N澤さんが開けたとき、たたみ方が変わっていれ
ば、誰かに体操服袋を開けられたと気づくだろう。
慎重に。慎重に。
広げたブルマーを手のひらで触ってみる。
思ったよりザラザラしている。
けれどこのブルマーが女子の下半身をピッタリと包ん
でいたと思うと頭がおかしくなりそうなくらい興奮して
くる。
鼻に近づける。まずはお腹側。そしてお尻。洗剤と土
ボコリの匂い。ナイロンの匂い。
そして股間の部分へ。
そのクロッチの匂いは今でも思い出せるが、言葉にはで
きない。
生地やホコリ、汗、排泄物、体臭、洗剤それらが入り混
じった匂いだろうが、言葉で表現するのは無理だ。
洗濯せずに何時間も着用したあとのブルマーの匂いという
しかない。
「女の子のはいたブルマーはこんな匂いがするんだ!」
頭の血管が膨らんで脈打っているのがわかった。本当に
興奮していた。
匂いをかいでいたのはわずかな時間だっただろうが、そ
れまでの人生のなかでこんなに何が何だかわからなくなっ
たことはない、そんな数分間だったと思う。
そんな時間が過ぎ、しばらくして私は思い直す。
「冷静にならなくては。バレないように戻さなきゃ」
我にかえった私は先ほど確認した「たたみ方」でブル
マーを袋に戻し入れ、トイレを出、なに食わぬ顔を装い
ながら廊下のフックに体操服袋を掛けた。
そして教室のカバンを取り薄暗い廊下を走って昇降口
に向かった。下校の通学路も走らずにはいられなかっ
た。
走り続けて家に帰った。
私の邪悪な行動が露見しないことを祈りながら。
そして生まれて初めて知った、ブルマーの感触と匂い
を頭の中で反芻しながら。