ブルマー体操服の上にジャージ上下という姿で生まれて初めて
外出する。
家の近所の細い道では誰とも会わなかったが、さすがに駅前通
りに出るとかなりの人が歩いている。
「今、僕はブルマーをはいています」心の中でそうつぶやくと
ドキドキがとまらない。
ふだんなら自転車で買い物に行く駅前のスーパーにゆっくりと
歩いて向かった。
人とすれ違うたび「ブルマーはいてるんですよ。女の子と同じ
なんですよ」と思いワクワクしながら。
冷静に考えれば夕方の駅前通り商店街を学校ジャージを着た
地元の中学生が歩いている、というマヌケな光景なのだが、私の
なかでは「カワイイ女の子」がスーパーに買い物に行くの図になっ
ているわけである。
いちばん恐れていたのは同じ学校の知り合いに出会うことだが、
出会っても最悪「なんでジャージ?」と聞かれるくらいですむだ
ろう。
スーパーまでは15分ほどかかったと思う。
夕方の混雑した店内に入る。
来てみたものの買いたいものがない。
何を買おうか。女の子が買いそうなものがいいな。
なんだろう。
私は普段は買うことがない「いちごポッキー」を選んだ。
私の中では「いちごポッキー」は女の子のお菓子だったのだ。
箱もかわいいピンクだし(笑)
レジに並ぶ。
周囲からは「女の子みたいなお菓子買うんだな」という目でみ
られている気がする。
これもドキドキだ。
自分の順番が来る。
レジのオバサンに心の中で「いまブルマーはいてます」とつぶやいてみる。
興奮する。
当たり前だがなんということもなく、買い物は終わった。
あとは交通事故や転倒してケガしたりしないように気をつけて帰る
だけだ。
これが私のアウトドア女装デビューだった。
まだそのころその自覚はなかったが。
あのときのドキドキと幸福感と興奮は忘れられない。
おわり