「○○(私の名)はR子のことが好きなんだよね」
「えっ、あ」
突然Sさんが切り込んできた。中2の秋だった。
「いや、まあ隠さなくていいから。〇〇は隠してるつもりかもしれないけど、
そんなのは本人にはわかるんだよ」
誰かそんなこと言ったか。誰にも言ってないぞ、そんなこと。
「いや。別に好きとかそんなんじゃないよ」
心にもないことを言う。あとでヒヤかされたりしたら面倒だ。
「まあね、R子はかわいいから。好きになる気持ちもわかるよ」
「いや本当に好きとかそういうんじゃないから」
「・・・まあそう必死なのが『好き』って言っているようなもんなんだけどね・・・」
こいつ心が読めるのか。
Sさんはつづけた。衝撃的な言葉だった。
「でもね、R子はやめた方がいい」
私は何を言われているのかわからなかった。
たとえ好意を寄せていることをR子さんが知っていたとしてもただの私の片思いにすぎない。
彼女の生活にはなんの関係もないはずだ。
ただ『やめたほうがいい』は衝撃的だった。
「なにそれ、やめるもなにもさ」
「〇〇、いい、あんたみたいな人とR子がつきあってなんの話するの?」
いま思えばこれはほんとうに核心をついている。
R子さんと『交際する』としても具体案なんか、なにも浮かばないのだ。
「R子はほんとうにいい子だけど、〇〇とはちょっと違う人間なんだよ」
「『違う』って『お嬢様」ってこと?」
「ううん、あんたにはわからないかもしんないけど・・・」
Sさんはそのとき少し笑った思う。
「〇〇、アンタはね・・・けっこういい男だよ。だからきっとこのさきモテる、
と思う。彼女もたぶんできるよ。でもねR子みたいな子はアンタには向かない」
Sさんは私の目を見てハッキリとそう言った。
〜つづく