中2の夏休みに入り、私は学校指定の体操服を買える
店を一軒、一軒下見することにした。まだ、堂々と店に
乗込んでブルマーを買えるほど覚悟は定まっていなかっ
たが、どこに行けば手に入るか調べておく必要がある。
自転車で走り回ったり、友人に「体操服どこで買える?
（もちろん男子用のということで）」と聞いたりした結果、
3軒の店で購入可能ということがわかった。
1店目は学校の至近の文房具店だった。ここは、学校
に近すぎるし、なんといってもこの店の娘が同学年にい
るのを知っていた。これはヤメたほうがいい。店に入っ
たとき、その娘が店番でもしていたら最悪だ。
2店目は学校から2kmほど離れた、スポーツ用品の小
売店。ここは中学の部活で使うユニフォームや用具なん
かも扱っていて、学校の教師や職員ともつながりがある
店だった。なのでここも却下。
残る3店目は駅前の小さな洋品店。もう望みはここし
かない。私はこの「H洋品店」をなにげなく観察するこ
とにした。
外から見ているだけではよくわからない。
私は一計を案じた。「ここでは扱ってなさそうなものが
あるか聞いてみよう」そうすればどんな感じかわかる。
店を切盛りしているのは、50代前半くらいの小太りの
オバチャン。愛想のいい人だった。
私はガラス戸を押し、入店した。そしてオバチャンに
「NK台中学のジャージってありますか？」
と3つ程先の学区の中学の体操服があるか聞いてみた。
