20代の前半、同棲していました。
2歳下の関西出身の小柄な女性と一緒に暮らしました。
私は実の両親との関係が良くなかったこともあって、早くに
家を出て生家との縁を切りたかった、ということもありました。
彼女との同棲生活は手探りの連続で、でもそれでもお互い
に仕事を持ち、懸命に毎日を過ごしていました。
よくケンカもしましたが、それはそれで楽しい生活だったな
と今でも思います。
しかし、彼女は病に倒れこの世から旅立ちました。
それからもうずいぶん長い歳月が経ちました。
最近、偶然というかちょっとした事情があり、彼女のお父さん
とお会いする機会があったのです。
お父さんも奥さんに先立たれていました。彼はもう妻も娘も
失くしたわけです。
こんな話をしてくれました。
「新婚のころよく海に妻と出かけました。なにをするわけでは
ないんですが、妻は海が好きでね。貝殻を拾ってきて、私に
見せるんですよ。それが今でもどういうわけか忘れられなく
てね‥‥‥」
‥‥‥その話を聞きながら私はこみあげてくるものがあり
ました。
彼の娘もおんなじだったのです。
私も彼女とよくM浜という砂浜に行きました。
たいしてお金もない私たちは休日にオニギリでも作って、海
に行くくらいしか過ごし方がなかったのです。
そして彼女も海が好きでした。
「こんなに近くに海があるなんて私たちは幸せだよ」
とよく言っていました。
そして彼女も貝殻を拾ってきて見せてくれました。そういうこ
とが私も忘れられないのです。
母娘ってこんなものなんですかね？
彼女が去って、彼女の母親も去って、残された男ふたりが
同じような思い出を忘れられずにいます。
もう今はM浜からは遠く離れたところに住んでいますが、い
つかひとりで訪れてみようと思います。
これが2018年最後の投稿です。よいお正月をお迎え下さい。
