中1のときに出会ったクラスメイトのR子さん。女の
子をこんなに好きになるのは初めての経験だった。
あれは9月くらいのことだったと思う。下校時に雨が
降り出した。その日たまたまだが私は折りたたみ傘を持
っていた。
そして教室の机の中にも置き傘を入れていたのであ
る。
まあ傘を教室に一本置いておけとアドバイスしたの
も、その日出がけに傘を持っていくように言ったのも私
の母親なのだが。
「雨降ってきたあ。どうしよう」
R子さんが困っていた。私はここはアピールチャンス
とばかりR子さんに提案。
「あのさ、この傘使えば」私は折りたたみをR子さんに
差し出した。
「え、○○君はどうするの?」
「俺はもう一本予備の傘があるから」
「えーほんと?ありがとう。じゃあ借りてく」
「うん。じゃあね」
私はR子さんの役に立ったことが嬉しくて上機嫌で家
に帰った。ふだんはうっとうしいと思う母親にもその日
ばかりは超感謝した。
そして翌日。
「昨日は傘ありがとね。乾かして明日返すから」
R子さんから嬉しいお言葉。
「いいよ、いいよ。いつでも」
そしてさらに翌日。
返ってきた傘を見て、いやもう決定的にR子さんのこ
とを好きになってしまった。
新品みたいキレイにたたまれているのだ、折りたたみ
傘が。
売り物以外でこんなにキレイにシワひとつなくたた
まれた傘をそのときまで見たことがなかった。膨らんで
ないんだ、傘が。
「うわ。なんでこんなにキレイにたためるの?」
「それはねー練習したんだよ」
「え?練習」
「そうお母さんに教えてもらったの。それで練習し
た」
「俺の傘がこんなにキレイになるなんて・・・」
「ありがとねー。助かったよフフフ」
もうクラクラするくらいR子さんに恋した。
私もその後「折りたたみ傘」をキレイにたたむ練習を
したのは言うまでもない。今でも折りたたみ傘をピシッ
とたためる女性がいたら・・・・・・惚れます。