安アパートで同棲していた20代の前半のころ。
夜9時ごろアパートに帰ると、彼女の様子がおかしい。
なにかにおびえている様子なので、聞いてみるとなんと「下着泥棒」
に出くわしたらしい。
彼女は午後わりと早くアルバイトから帰ってきて、そのまま洗濯をし、
午後3時ころに物干しに洗濯物を干した。
そして、そのまま干しっぱなしにしていたのだが、夕方6時ごろ、物音が
するので物干し場の方をみると、男が洗濯ものをピンチハンガーごと物干竿
からはずして持ち去るところだったらしい。
たしかに部屋はアパートの一階、目の前は駐車場だったので、防犯性は低い
のだが、彼女はあまりのことにびつくりし、声も出なかったとのこと‥‥‥
「とにかく危害を加えられなくてよかったよ」
彼女は非常に恐かったらしく、そのまま泣き出してしまった。
それに、まあ自分の中に油断があった、ということも悔しかったのだろう。
確かに不用意だなと、私も少し思った。
それからは彼女の下着は室内に干されるようになった。
私は自分が小中学校時代、「どんなに好きな子のモノでも絶対に盗まない」と
自分に言い聞かせていたことを思い出していた。
それは自分の好きな女の子を恐怖させることだと自覚していたから。
下着ドロの被害にあっておびえている彼女を見て、子供ながら私は正しかったな、
と思った。
偽善者なのかもしれないが、私は目の前にブルマーが干してあっても盗んだりはし
ないだろう。