意を決した私はH洋品店のオバチャンに「ブルマーを下さい」と告げた。
愛想のいいオバチャンはほほえんだ。それは一瞬の表情の変化だったが、
それを見た瞬間、私は「売ってもらえる!」と確信した。
「はいはい、M中のブルマーね。サイズはMね?」
「はいっ」
オバチャンは店の奥に入り、体操服を保管してある棚からブルマー
を探してくれている。
「1枚でいいの?」
その質問は想定していなかった。買えるかどうかしか気にしていな
かったのだ。
(しまった。本当なら買えるだけ何枚でもほしい。だけどお金が足り
るかどうかもわからない・・・。今日のところは1枚で・・・)
「はいっ。1枚でいいです」
私は準備にぬかりがあったことを後悔しながらも、「R子さんとお揃
いのブルマーが手に入る」という喜びでもうジッとしていられないよう
な気分になった。
オバチャンはハガキほどの大きさにたたまれて、メーカーのロゴ入りの
透明な袋に入ったモノを持ってレジに戻ってきた。
(これが新品のブルマー。意外に小さい・・・)
「はい。これね。Mサイズ」
オバチャンは私に袋に貼られたサイズの表示シールを確認させ
てくれる。
「はい」
「はい。これね。M中のブルマー。Mサイズ」
オバチャンはレジ横にブルマーを置いて、私に確認させてくれる。
「1150円ね」
私はブルマーが意外に安いことに驚いた。そして今日準備した金額なら、
まだあと2枚ほど買えることを悔やんだ。
でも、すでに1枚だけでいいと言ってしまっている・・・。
私は代金を支払った。オバチャンはブルマーを紙袋に入れてわたしに手渡した。
そしてそのとき私にこう言ってくれたのだ。
「サイズが合わなかったら、持ってきてね。交換するから」
私はこの言葉を聞いて一瞬涙が出そうになった。それまでの緊張が途切れて
泣出しそうになったのだ。それにひどく嬉しかった。
(いままでずっと欲しくて欲しくてたまらなくてあんなに悩んで苦しんだ。
でも悩むことなかったんだ。こんなに簡単にブルマーを売ってもらえた。
オバチャンは私のことをこれっぽっちも疑ってないし、それどころか客とし
て親切にしてくれる・・・。ありがとうオバチャン・・・)
「はい・・・」
私は小さな声で返事をすると、ペコッと頭を下げて
店から飛出した。