R子さんは小柄で色白、細身でショートボブ、脚が
がキレイ。前髪は横分け。ちょっとタレ目で鼻はちいさ
く、おちょぼ口。
あまりおしゃべりではないけれど、性格が暗いという
わけでもなく、いつもおだやかな雰囲気の女の子だっ
た。おっとりしてるっていうのかな。
音楽が好きでポップスやクラシックのこともよく知っ
ていた。
彼女はオーケストラ部に入部する。
そしてパッと見は優しそうな彼女だけど、ちょっとイ
ジワルなところもある。そこがまたいい。たまらなくい
い。
こう書いてみると現在でも私はこういう女性が好きな
んだ、ということが痛いほどわかる。
そしてなにより、オートガイネフィリアの私にとって
「理想の女の子」こそ、このR子さんなのである。おそ
ろしい。本当に。
入学してひと月ほどしたある日、スポーツテストなる
ものがあった。様々な測定種目の中、私が苦手としてい
るものがあった。鉄棒の「懸垂」だ。
腹筋と上腕の筋肉を使って自分の体を持上げるのだ
が、そのころの私はそのコツがわからず、いくら力んで
も体を引上げることができなかった。
その懸垂の測定現場にR子さんが現れたのである。R
子さんは残酷にも私に話しかけてきた。
「懸垂何回できた?」
私は恥ずかしくてたまらなかったが、本当のことを答
えた。
「0回。懸垂苦手なんだよ・・・」
それを聞いたR子さんはクスッと笑い、
「なんだー。○○(私の苗字)なら10回くらいでき
るかと思ったよー」
こういうところがイジワルだなと思う。しかし、だが
しかし。私はそのときなぜだかわからないが、恥ずかし
いと思うと同時に非常にトキメいていたのである。
やはりそのころからMだったのか・・・・・・。
人に恋するということの始まりだった。このR子さん
への思いはヘタしたら数十年たったいまでも続いてい
る。私はちょっとイジワルな女性が好きだ。
今なら懸垂、10回はできるんだけどな。